壁構築 考-1 壁構築のコンセプトと壁役の比較
1.壁構築とは
2.壁ポケモンに求められること
3.壁ポケモンを比較する
4.壁の弱点
5.壁の対策
6.結びに
1.壁構築とは
壁構築のコンセプトは、”リフレクター””ひかりのかべ”(以下壁と称す)を使用することで、エースの行動回数を確保することにある。運用法こそ異なるものの、考え方としてはダブルバトルで”ねこだまし””このゆびとまれ”などで隣をサポートすることに近いものがあるだろう。
壁から”りゅうのまい””からをやぶる””ちょうのまい””つるぎのまい””グロウパンチ”などの強力な積み技を安全に使わせたり、”じゃくてんほけん”を発動させたりといった動きが基本的な動きとなる。
なお、類似した構築として”あくび”でエースが安全に行動する機会を確保する構築が存在する。眠り状態にすることで行動自体をストップできる”あくび”ギミックと比較した場合、壁は場にかける技であるために妨害する手段が少ない点、耐久力がある程度の期間持続的に上昇するために反転攻勢を防ぎやすい点、”じゃくてんほけん”と相性がいい点が優れている。
対して欠点としては、ダメージ技以外の、定数ダメージには無力である点、急所に弱い点などが挙げられる。
もちろん、相性のいいポケモンには似通った部分もあるため両者を併用した構築も考えられる。
なお、本稿では考え方をシンプルにするために基本的には初手から壁ポケモンをくりだすことを想定しているが、実際には初手では対面性能に優れるポケモンや”ステルスロック”ポケモンをくりだし、試合中盤から壁を展開するような動きをすることも多いだろう。
2.壁ポケモンに求められること
壁を張ることができるポケモンは多いが誰でもいいというものではない。具体的には
a.行動回数の確保
b.対妨害性能
c.起点にされづらさ
d.持ち物への依存度の低さ
などが重要となる。
a.行動回数の確保、というのはどんな相手でも安定して壁を使う行動ができるか、という意味である。耐久力・すばやさの双方が大切になる。
例えば”いたずらごころ”はほとんどの相手に先制して確実に壁技を使うことが可能であり、不意の”こだわりスカーフ”による攻撃で壁技を使うことができない、ということが発生しづらい点で行動回数を確保しやすい。また、”こだわりハチマキ””ブレイブバード”一撃で落とされてしまう程度の耐久力しか持たないポケモンでは選出画面にファイアローがいるだけで選出が不自由になってしまう(”こだわりハチマキ””ブレイブバード”を起点に”つるぎのまい”できるようなポケモンを控えに用意するという手もあるのだが、対ファイアローに関しては”ちょうはつ”による妨害も想定しなければならない点に注意が必要である)。
b.に相手の妨害技への性能。第一に挙がられるのは”ちょうはつ”を持っているかもしれない相手に充分に対応できるかだろう。単純に”ちょうはつ”対策に攻撃技を用意しておけばいいというものではなく、”ちょうはつ”をしてくるかもしれないポケモンに対して有利に動けるかどうかが課題となる。対戦において”ちょうはつ”してくるポケモンはけしんボルトロス、ファイアロー、ジャローダ、ギャラドス、ゲンガーなどが代表的であり、これらに対して見た目だけでも有利なポケモンは壁役としての評価が高くなる(ただし、壁役でこれらのポケモンを殴り倒したとしても”ちょうはつ”を喰らってしまってはコンセプトが崩れていることには注意が必要である)。
それ以外では、くさタイプや”マジックミラー”、あるいは”しんぴのまもり”を覚えるポケモンは”キノコのほうし”を防げる点で評価される。
c.に起点にされづらさ。壁構築で嫌なパターンとしては壁を放置したまま積み技を連打される、という流れがあるためにこれらを防げるかどうかである。幸いにも壁ポケモンは”でんじは”あるいは”へびにらみ”を覚えるポケモンが多いため、すばやさの高さを活かして”りゅうのまい””ちょうのまい”などでの制圧を受けることは防ぎやすい。それ以外では”イカサマ””おきみやげ”などを覚えるポケモンは起点にされることを防ぎやすい。
d.に持ち物への依存度の低さ。多くの場合”ひかりのねんど”を持ち物とするため、上述の要素を持ち物込みで持ち合わせても意味がない。早期に退場することが望ましいという性質上、実質的に持ち物なしでも充分な仕事を果たせることが期待される。
ただし、”ひかりのねんど”に拘泥する必要はそこまでなく必要に応じて”ラムのみ””きあいのタスキ””だっしゅつボタン””ゴツゴツメット”を持たせることもあるだろう。壁要員を複数採用する場合には当然どちらかは”ひかりのねんど”は持たせられない。
これらの挙げた要素は代表的なものであり、実際には構築によってどの要素を最重要視するのかは変わってくる。
多少他の要素を犠牲にしてでも”おきみやげ””だいばくはつ”でエースが動ける時間を長く用意するパターンもあるだろうし、耐性の多いポケモンで壁を張ることで相手の攻撃を誘導し後ろのエースを交代出ししやすくするという手もある。
3.壁ポケモンを比較する
・クレッフィ
”いたずらごころ”を持つことが最大の特長。おなじ”いたずらごころ”を持つエルフーン・けしんボルトロス以外からは先制で”ちょうはつ”を受けることがないため、仕事への信頼性が高い。後述のニャオニクスもあわせて壁要員ということが看破されやすいと言われることも多いが”いたずらごころ”を妨害できるのは上述の二匹しかおらず、それ以外のポケモンでは『わかっていても妨害できない』点が強み。
”イカサマ”を覚えるために物理の起点になることを牽制できる。
自主退場技はないが、耐性が多いため後ろのポケモンとスムースに連携しやすく、残りHPがわずかでも残っていれば終盤再利用もしやすい。
壁より存在感のある”いばる””みがわり”型の存在から”みがわり”を想定した動きを相手に強いる点も優秀である。
型によらず”ちょうはつ”が有効であるため”いたずらごころ””ちょうはつ”の的である点は懸念材料だが、それを逆手に取った”マジックコート”の採用も一向に値する。
・ニャオニクス♂
同じとくせいを持つクレッフィと比較すると耐性は貧弱で”イカサマ””マジックコート”も覚えないが、”しんぴのまもり”で状態異常からエースを守れること、”あくび”によるサポートが可能な点が強みである。
壁役・エースともに状態異常を防ぐ術がないことも少なくないため、”しんぴのまもり”のためだけに採用を考慮する価値はある。
”いたずらごころ”故の強みはクレッフィと同様であるため、クレッフィの項も参照。
・ジャローダ
”あまのじゃく”で自身がエースになることが可能であり、その火力の高さから起点にされづらいことが非常に優秀。構築次第では、エースと壁の両方をこなすことが視野に入る特異なポケモン。
”へびにらみ”でじめんタイプにも麻痺を入れることができる他、”がんせきふうじ””こごえるかぜ”などによるすばやさダウンを受けないことも相まって初手として多く用いられるカバルドン、ラグラージ、キノガッサ、ガブリアスといったポケモンに対して有利に動きやすい。”ゴツゴツメット”を持てばガルーラにまで強め。素のすばやさが丁度ゲンガーを抜けるラインである点も優秀である。
”ちょうはつ”で相手の展開を妨害することもでき、起点作りポケモン同士でかちあった時はかなり強い点も含めて初手性能が高いことが強み。
最大の問題はファイアローに弱いことで、”ちょうはつ”でも”こだわりハチマキ”でも無抵抗になってしまう。ジャローダを使う場合は、初手ファイアローに対応しやすいポケモンと併用することが望ましい。
・ライコウ
メジャーな”ちょうはつ”持ちであるけしんボルトロスやファイアローに強気に動けることが最大の強み。ゲンガーよりも早く、けしんボルトロスやファイアローに強い壁ポケモンは事実上ライコウしか存在しない。
”いたずらごころ”と違って”こだわりスカーフ””じしん”などで頓死することがありえるため、”じしん”に対して切り返しやすいボーマンダ、ギャラドス、パルシェンなどと連携するとよい。
”ほえる”を採用しないと積みの起点にされづらく、その場合は”めざめるパワー”の技スペースがなくなってしまうなど技スペースが足りないところが悩みどころ。
・ラティオス
単純に火力が高く、壁以外の運用も多いために”ちょうはつ”されづらく、メジャーな”ちょうはつ”持ちに自然に打点を持つことができる。
高いすばやさと”おきみやげ”の存在が武器で、壁ターンを有効活用するために自主退場したり、あるいは壁を張る余裕がない状況でも”おきみやげ”さえ決まれば擬似的に二枚の壁を張ったのに近い効果が得られるなど、柔軟な動きが武器である。
・アグノム
”ちょうはつ”によって相手の展開を妨害できること、”ステルスロック”でエースによる突破をしやすくできることが強み。
”だいばくはつ”で”きあいのタスキ”や”みがわりを潰しながら退場できる点も優秀である。
多くの便利な技を覚えるポケモンではあるが、耐久の低さから行動の取捨選択がシビアになりがちな点には留意が必要である。
・エーフィ
”マジックミラー”で”ちょうはつ”を受けない点が売り。”トリック”や”キノコのほうし”など、起点作りを妨害する技のほとんどをシャットアウトできる。
ただし、耐久力の低さからエーフィ一体で”ちょうはつ”対策としては心もとないところがある。”ステルスロック”や”あくび”を防げるために展開してくる相手にも強めで、こちらから”あくび”をしかけることもできる。
なお、”アシストパワー”を覚えるため”バトンタッチ”構築においてはエースになることもある。
・ヒートロトム
”けしんボルトロス・ファイアローといったメジャーな”ちょうはつ”持ちに強く、後攻”ボルトチェンジ”で後ろに繋ぐことができる。
ただし、すばやさ・耐久ともに低めに留まるのが不安要素である。
・ユクシー
耐久力に恵まれており、”おきみやげ””あくび””とんぼがえり”など豊富な技を覚える。
ただし、すばやさが低めであること、”ちょうはつ”のような妨害技にリスクを持たせづらいことなどが課題となる。
4.壁の弱点
壁構築において警戒すべきことは、
a.壁を張れないこと
b.壁のターンを無駄遣いさせられること
c.張った壁が有効に働かないこと
などが挙げられる。具体的にはどのような状況下というと、
aでは壁技を使う前に先制攻撃で落とされたり、”ちょうはつ”されたりという可能性が考えられる。また、リザードンのような物理・特殊どちらなのかわからないポケモンに対しては、有効な壁技を使う前に壁役が倒されることがありうる。
bでは、考えられるのは自主退場技を持たないポケモンを相手が敢えて倒さないことで、決定力を場に出させないような状況である。また、”キノコのほうし”などで壁役が眠らされて壁のターンを浪費させられる場合など。
cは、例えば『”リフレクター”を張ったが相手が”つるぎのまい”を使用したために”リフレクター”の意味がない』というような場合である。
5.壁構築への対策
項4で述べたことがそのまま壁への対策となる。
構築段階で考えるなら、”ちょうはつ”を持ったけしんボルトロスやエルフーンが非常に有効である。クレッフィやニャオニクスに対しても一方的に封殺することが見込める。けしんボルトロスやエルフーンは壁構築に限らず”あくび”や”ステルスロック”による展開も防げ、比較的スムースに構築に入るポケモンであるという点でも優秀である。ライコウは”ちょうはつ”持ちに強めのポケモンではあるが”ちょうはつ”事態を防げるわけではないために壁展開自体を防ぐために”ちょうはつ”を入れる価値はある。
壁役は”ラムのみ”を持ちにくいため、”キノコのほうし”などで寝かしつけるのも擬似的に近い効果が見込める。エースも”いのちのたま”やメガストーンを持つことを優先して”ラムのみ”を持たせづらいポケモンも多いため眠りのみならず”でんじは””おにび”など、ダメージ技以外で戦力を削ぐことが有効になる。
それ以外では”つるぎのまい”のような積み技で壁を上回る火力で攻撃するのも手である。”でんじは”などで妨害されるパターンは多いので、ガブリアスやローブシンなど、状態異常に強いポケモンが望ましい。
立ち回りレベルでは壁ターンを無駄に消費させるように動くのが基本である。壁を張るポケモンは多く場合火力がさほど高くないため、敢えて倒さないままターンを経過させることが容易である。特に自主退場技を持たないポケモンを使う場合はエースへと交代出しすることを視野に入れて壁役に向けて放たれた攻撃でエースが致命傷を負わないように耐性をずらしていることが多いため、壁役に対して有効ではなくエースに対して有効な技を打ち続けることで相手の行動を制限したままターンを消耗させることができる。
”おきみやげ””だいばくはつ”などで自主退場された場合は有効ではないが、それでも相手の頭数を減らすことには成功しており、一方的に不利ではない。
よしんば相手の思惑通りに展開されても壁の効果はダメージを半減するものでしかないため、”じゃくてんほけん”にさえ気をつければダメージを蓄積させて強引に殴り倒すことも不可能ではない。
こうした対抗手段を全て処理され、試合を有利に運ばれても諦めてはいけない。一発でも多く攻撃をあてられるように立ち回り、急所に当てる確率を高めたい。
どうしても環境に壁構築が多いような場合には”かわらわり””きりばらい””すりぬけ”などを採用することも考えることになるかもしれないが、実際に壁対策のためだけにこれらを採用することはまずないだろう。